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十三夜の月──時と永遠

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雲の多い空に十三夜の月が浮かぶ。十三夜の月は、中秋の月のような大きな円盤ではなく、楕円に近い。雲の切れ目の暗黒の池の中に、この月が浮かぶ。これはこれで風情がある。そして、これと同じ月を、紫式部も道長も、西行も芭蕉も眺めたと思うと、もちろん、人間の果敢なさを思い出すとともに、また、「永遠」という概念を思い出させる。


もちろん、「永遠」とは単なる時間的な概念ではない。単なる無限な量としての永遠は、正確には永久と呼ばれるべきものであって、それは、真の無限としての永遠ではない。永遠とは理性的な概念である。


真の永遠は、時間を克服している。そして、人間がこの無限を意識するのは、今夜のような月を見る時である。


西行も芭蕉も、そして紫式部も、多くの芸術家や宗教家はこの永遠を求めようとした。そして、それを芸術や神や仏の中に見出した。神こそ、その本性が永遠に他ならなかったから。


時間と永遠の問題について──これは波多野精一氏の名著『時と永遠』 のテーマでもあったが、──私もまた、機会があれば折に触れて、このような問題についてさらに考えてみたいと思っている。


 


by hosi111 | 2005-10-14 20:21