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入道雲

 


時折激しい夕立が降ったりするものの、連日晴天が続く。きれいな青空が広がっている。昨日は長崎の原爆犠牲者の慰霊祭があった。六十年前の広島も長崎も今日と同じように美しい青空が広がっていただろう。さもなければ、原爆は投下されなかった。原爆の被害を「効率的」にするためには、投下地が晴天でなければならなかったから。小倉の市民は、その天候のゆえに急遽投下予定地から外されて、過酷な運命から免れた。


 


夏の太陽の光熱で大気が不安定なのだろう。高空で入道雲が刻々と姿を変えて行く。その純白の清らかな美しさはくらべるものがない。それにしても、夏の大空に舞い上がる巨大な雲柱に入道雲とネーミングしたことに限りないユーモアを感じる。もちろんこの雲が純白で聖人のように清らかであるためではなく、そのむくむくと湧き上がる雲の様子が、坊主の頭のように怪しげだったために名づけられたのだろう。秋空のいわし雲と同じく、その雲の造形の妙とともに、命名にも興趣を感じる。


 


青空にせよ樹木にせよ、夏は彩りが豊かだ。世界は色彩に満ちている。この色彩の原理は光である。そして、光が粒子と波という矛盾する性質を併せ持っていることもよく知られている。ニュートンはプリズムによって白光をさまざまな色彩に分析して見せた。光には速さがあり、それが電磁波であることもわかっている。


そして、アインシュタインはその有名な公式 E = m c^2 , によって 物質が巨大なエネルギーを秘めていることを明らかにした。この公式には、物体の質量に秘められたエネルギーが、光の速度 = C の自乗に比例するという法則が明らかにされている。光の速さがどれほどの大きさであるかを想像すれば、物質の秘めている巨大なエネルギーに、恐怖さえ感じる。


 


アインシュタインやニュートンたち物理学者は、純粋に自然の神秘を解明しようとして、実際その法則性を、自然の姿の一部を明らかにすることに成功した。この物理科学の成果を政治と軍事の世界で利用し、その法則性の真理を原子爆弾によって実証したのが広島と長崎の事件である。


 


なぜ東洋は、こうした自然科学の牛耳を取れず西洋に後塵を拝さなければならなかったのか。少年時代から持ちつづけた私の問題意識はまだ、解消していない。自然科学の世界のみならず、旧態依然とした政治の世界の人間。政治においても宗教においても科学においても哀れむべきノー天気な東洋人。イラクも日本も西洋文明に敗北したのだ。この事実を直視することなくして未来はない。


 


おりしも、昨日はあの青空から、宇宙からディスカバリーが無事に帰還した。日本人野口聡一さんが乗っている。イラクのテロリストたちも一刻も早く無駄な流血騒ぎは止め、自然科学の世界で西洋人と闘争したらどうか。政治の世界のみならず、科学の領域でも日本もイラクも敗北したのだ。それを認めることから出発すべきである。


 


まもなく「終戦記念日」が来る。敗戦を終戦と言い訳することを許している国民。敗戦の痛みをこそ永久に忘れないために記念しなければならないのに。


 


 


by hosi111 | 2005-08-10 08:49