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混迷を深めてゆく中東情勢

混迷を深めてゆく中東情勢

前に引用したクラウトハマーの小論(The Problem with Obama’s ISIS Strategy(オバマのISIS戦略の問題)) では、空爆だけによってはイスラム国を壊滅に追いやるという根本目的を達成できないことを主張していましたが、確かに地上軍を、陸軍を投入することなくし て失地を回復できないと思います。原則はその通りですが、しかし、上記のビクター・デービス・ハンソンの小論でもわかるようにイスラム国の勢力が 膨張しはじめているイラク北部地域、さらにシリアでは、地域の当事国の敵対関係が入組んでおり、イスラム国を殲滅することが、アメリカと敵対しているシリ アを援助することになる一方、同じ対立関係にあるイランとはイスラム国を攻撃するうえで協力しあえるのかなど、実際の具体的な戦術のうえで、地上軍の投入というアメリカの政 治的な選択をきわめてむずかしくしています。

イラクやアフガニスタンにスンニ派親米政権を確立して、アメリカはそれらを間接的に支援することに よってイスラム国の台頭を押さえ壊滅させることができれば理想的なのでしょうが、実際はアフガニスタンもイラクもそれらの国内政治情勢はむしろ混迷を深めつつあり ます。イスラム国はシーア派でイラク国内にも同じシーア派がいます。アメリカが直接関与することなくしてイスラムテロ勢力を押さえきれないと思います。

ビ クター・ハンソンは「最良の選択は、中東で唯一の二つの親米的で立憲的な集団、イスラエルとクルドを、無条件に支援することだ。」と言っていますが、「イ スラエルとクルドを支援する」だけでは、オバマ政権が目的としている、イスラム国の殲滅という目的は実現できないでしょう。

か といって中東を放棄しアメリカがこの地域を置 き去りにしたとき、そしてこの地域がイスラム国に乗っ取られたときには、さらにアメリカ本土へのテロ攻撃は厳しさを増すと思います。いずれにしてもアメリ カの苦悩は深いですが、そうしてアメリカが中東の泥沼に気を奪われ足を取られることは、北東アジアにおいては中国の膨張政策を容易にさせることになりま す。そうして日本の同盟国アメリカの存在感が世界において相対的に低下してゆくことは、必然的に日本が従来のような一方的なアメリカ依存では立ちゆかなく なって来るということでもあります。日本もさらに自主独立の性格を強めてゆかざるを得ません。アメリカもそれを求めてくるでしょう。このことは必ずしも悪 いことばかりではないと思います。日本国内の朝日新聞問題なども、こうした国際関係を背景にその意義を見ることも必要だと思います。
by hosi111 | 2014-10-03 13:55 | ニュース・時事評論